ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会31「肝臓・胆道系疾患に対する内視鏡検査の役割」… 肝臓病に対する内視鏡検査の必要性のお話です

肝臓友の会

31「肝臓・胆道系疾患に対する内視鏡検査の役割」… 肝臓病に対する内視鏡検査の必要性のお話です

消化管は口から肛門まで一つの管です。内視鏡はその管の中の異常を観察する道具です。従来から胃カメラと言われている検査は、上部消化管(食道・胃・十二指腸)を観察する内視鏡検査のことです。 消化管の異常を知らせてくれるものの一つに便の色があります。便が真っ赤になったり(下血)、黒くなったり(黒色便)、白くなったり(白色便)します。下血や黒色便は消化管に出血を生じている時に見られ、白色便は閉塞性黄疸といって、胆汁が流れなくなり黄疸を生じたときに見られます。

肝臓への血流は動脈と門脈により流入します。通常、血液は動脈で運ばれて静脈へ返りますが、胃、腸、脾臓、膵臓からの血液は門脈を経由して肝臓に流入します。消化管で吸収された栄養分や毒物、病原性微生物なども肝臓へ集まりここで代謝されたり解毒したりしやすいようになっています。ところが肝臓が悪くなり肝硬変になってくると、肝臓を通って心臓に戻るはずの血液が、肝臓が硬いため十分肝臓を通って心臓に戻ることができず、門脈からバイパス(迂回路)として食道・胃を経由して戻るようになります。この時に食道や胃に出現する太い血管の瘤が出来ることがあります。これを食道胃静脈瘤と言います。(門脈から静脈瘤は食道や胃にできることが多いですが、稀に大腸(結腸や肛門付近)、十二指腸にできることもあります。)

食道・胃静脈瘤の症状は基本的には無症状です。この太い血管がさらに拡張して赤みを帯びてくると、破裂して、患者さんは多量の血液を吐いたり、下血・黒色便を生じたりします。静脈瘤は突然の出血が唯一の症状です。一度破綻出血すれば、致命的要因となりうるので、胃カメラで静脈瘤の程度を定期的に観察する必要があります。

食道・胃静脈瘤の治療法は?

内視鏡を使った治療が第一選択です。治療は次の二つが主流です。

  1. 内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL):特殊なゴムで静脈瘤を結紮する方法
  2. 内視鏡的硬化療法(EIS):静脈瘤内に硬化剤(いわゆるセメント)を注入する方法

二つの手技を併用して治療することが多いです。 一般に、静脈瘤が破裂し出血し、緊急で内視鏡治療を行った場合の予後は、予防的に治療した場合の予後より不良であります。

以上のような病気を発症することがありますので、主治医の先生と相談されながら、各個人により検査を受ける頻度は変わりますが、定期的に上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けていただくことが大事なことです。

胆道系疾患(胆管、胆汁)

黄疸とは、赤血球を構成するヘモグロビンの分解代謝産物で黄色の色素であるビリルビンが血液中に増加し、眼球結膜や皮膚が黄色くなった状態を言います。黄疸は肝機能が非常に悪くなったとき(急性肝炎や肝硬変等)等に起こる時と胆汁の流れがブロックされたために生じる黄疸があります。

今回は胆汁の流れが悪くなって起きる黄疸について説明します。 胆汁とは肝臓で1日約600ml生成される黄褐色でアルカリ性の液体です。肝細胞で絶えず生成され、肝管を通って胆嚢に入り一時貯蔵・濃縮されます。その後、食事をすると胆嚢が収縮し、総胆管を通って、膵管と一緒になった後に十二指腸へ流れ込んで消化吸収の手助けをします。十二指腸への出口の部分を主乳頭といいますが、ここにはオッディ括約筋という筋肉が内側にあり胆汁や膵液の流れの調整をしております。

総胆管の中に胆石や腫瘍ができてしまうと、胆管の出口に石が嵌ったり、胆管が細く狭くなって胆汁が流れることが出来なくなって黄疸や白色便を生じます(これが閉塞性黄疸)。黄疸を生じると、肝機能が悪くなったり、胆汁がばい菌に感染し膿みがたまって胆管炎を生じたりします。そのため、胆汁の流れを良くするために、内視鏡を十二指腸まで進めて、主乳頭より細い管を胆管に挿入(内視鏡的逆行性胆管膵管造影;ERCP)し貯まっている胆汁を外に流す管を留置してきます(経鼻胆道ドレナージ)。肝機能が改善すると、黄疸の原因の治療を行います。内視鏡を十二指腸に挿入し、胆汁の出口である主乳頭部のオッディ括約筋を電気メスで切開し出口を広げます。その後、胆管に結石を壊す、砕石具を内視鏡を経由して胆管内に挿入し結石を壊したり、採ったりして胆管内のお掃除をします。また腫瘍ができて黄疸を呈した場合は、金属やプラスチックの管を胆管の狭窄している部分に留置し、胆汁の流れを良くしてあげることができます。

上部消化管に対する内視鏡検査の、ほんの一端を紹介させていただきました。ここ数年の進歩は著しく、新しい技術が開発されてきており、体に負担の少ない治療(内視鏡治療等)で治すことができるようなってきています。

2010/2/20 肝臓友の会 勉強会 講演要約
実藤医院 實藤俊昭


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