ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会28「知っておきたい、肝細胞癌の基礎知識」… 肝細胞癌の原因や治療のお話です。

肝臓友の会

28「知っておきたい、肝細胞癌の基礎知識」… 肝細胞癌の原因や治療のお話です。

日本は世界一の長寿国で、女性が85.99歳(世界一位)、男性が79.19歳(世界三位)です。ヒトの最大寿命(限界寿命)は120年といわれています。では、なぜヒトはそれ以前に死亡しているのでしょうか? 3大死因は、悪性新生物、心疾患、脳血管障害です。ただ、その死亡数は、心疾患、脳血管障害が減少しているのに比べ、悪性新生物は一貫して増加の傾向を認めています。その中で、肝臓癌は、男性では肺、胃に続き3位、女性では大腸、胃、肺、乳房に続き5位の死亡原因となっています。平成18年には、合計33662人が肝臓癌で亡くなっています。

原発性肝癌は、主に肝細胞癌と胆管細胞癌ですが、その90%は肝細胞癌です。肝細胞癌が正常な肝臓に発生するのは非常に希なことであり、発癌の危険群が存在します。それが、B型あるいはC型の慢性肝炎および肝硬変です。当然飲酒も発癌の危険因子ですが、最近では、非アルコール性脂肪性肝疾患も肝細胞癌発癌の危険因子とされています。

肝細胞癌はこのような危険群が存在しますので、肝炎を沈静化し肝障害の進行を抑えることである程度予防可能となります。インターフェロン、抗ウイルス剤、強力ミノファーゲンC、ウルソなどの投与と生活習慣の改善が発癌の予防となるわけです。

さらに、肝細胞癌発癌の危険群の人たちを定期的にみていくことで、早期発見も可能です。定期的な血液検査・腹部エコーに加え、造影エコー、造影CT、造影MRIなどにより診断します。最近は、装置および造影剤の進歩で、より診断能が向上しています。

肝細胞癌の治療には、肝切除術、ラジオ波やマイクロ波による焼灼術、エタノール注入術、肝動脈塞栓術、肝動注化学療法、全身化学療法、放射線療法、肝移植などがありますが、癌の進展度(大きさ、数、脈管侵襲、肝外転移)や悪性度とともに、その人の持つ肝予備能が治療をするうえで重要な要素となります。当然、肝細胞癌が進行した状態や肝予備能が低下した状態の生命予後は悪くなります。しかし、肝予備能がよければ、進行した肝癌でも十分に治療できることがあり、早期の肝癌でも肝予備能が悪ければ治療困難となります。

癌治療は常に再発が問題となりますが、肝細胞癌は二つの再発形式があります。ひとつは、治療した癌からの局所再発や画像上診断できなかった転移巣からの再発で、もうひとつは新たな肝細胞癌の発癌です。再発の予防も、肝炎を沈静化し肝障害の進行を抑えることです。

2009/5/30 肝臓友の会 勉強会 講演要約
消化器内科部長 梶原雅彦


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