ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会27「C型肝炎に対するインターフェロン療法の工夫」… C型肝炎のインターフェロン治療のお話です。

肝臓友の会

27「C型肝炎に対するインターフェロン療法の工夫」… C型肝炎のインターフェロン治療のお話です。

C型慢性肝炎、肝硬変の治療には原因療法と対症療法があります。

原因療法はC型肝炎ウイルスの排除を目的とするインターフェロン療法があります。日本人に最も多い1群・高ウイルス量の患者さんは、以前の週3回の24週間のインターフェロン単独療法では、6%程度しか完治が得られなかったものが、現在は週1回のインターフェロン(ペグイントロン、ペガシス)と抗ウイルス剤であるリバビリン(レベトール、コペガス)の内服を組み合わせた48週の併用療法が、最強の治療法であり、その効果は全国的に約5割の人に認められています。ましてや、ウイルス量が少ない人やインターフェロンが効きやすい2群の人は、24週間の治療でも約90%の確率で完治しますので、C型肝炎ウイルスの持続感染者では、肝癌予防の為にもインターフェロン療法を受けることが重要です。 当院では、1群高ウイルス量の患者さんの完治率が30から40%だった5年前に、50%弱の完治率を認めました。インターフェロン療法の著効率を上げるために個々の患者さんの病態に応じた治療法の応用や工夫を行ってきた結果だと考えます。

保険診療の関係で詳しくは記述できませんが、

① 副作用対策(皮膚症状、口腔内症状、貧血に対して予防的治療)

これらの副作用の発現を少なくする薬を予防的に内服させ、治療期間の完遂をめざす。インターフェロンおよびリバビリンの減量を少なくする。その結果、再発を防ぎ、著効率が上がります。 口腔内症状に対する対策は、学会でも報告し論文にもしています。

② 治療期間の検討

保険診療の上では、併用療法は2群および低ウイルス量では24週間、1群高ウイルス量では通常48週ですが、治療後の経過により72週間のまでの延長投与が可能となりました。当院では、以前より個々の患者さんの治療経過に応じて投与期間を決め、短期間でも完治が出来る患者さんは短く(対費用効果を考えて)、また、難治例では併用療法後に単独療法を追加したりして、4回目以降のインターフェロン療法で完治した患者さんも何人もおられます。また、7回目のインターフェロン療法で完治した患者さんもあり、学会で報告もしました。

③ 生活指導

肥満・脂肪肝、飲酒、糖尿病の存在はインターフェロン療法の効果が減弱します。そのためにインターフェロン療法の導入前に食事・生活指導などを栄養士さんと行っています。 当院で毎月開催している肝臓病教室で勉強することが最も良いと思います。

④ 併用薬の検討と追加内服

健康食品や栄養剤などには鉄分が含まれており、肝臓に悪影響を及ぼします。小柴胡湯などの漢方薬は原則的にインターフェロン療法中は副作用(間質性肺炎)が生じやすくなるため、併用できません。これらのことを薬剤師とともにチェックしながらインターフェロン療法の導入を行います。さらに、C型肝炎ウイルスの増殖を抑制することが実験的に証明されている薬剤(高コレステロール血症や骨粗鬆症の薬)を追加することで著効率が約5%から15%増加することが報告されています。 保険の問題もありますが、これらの薬を併用してインターフェロン療法を行ったりしています。

⑤ 抗ウイルス療法の応用治療

当院では、インターフェロン療法難治例の患者さんに対して、以下のような治療を行っています。

  • 二重濾過血漿交換療法(DFPP)とペグイントロン・リバビリン併用療法と同時導入
  • 初期強化療法(インターフェロンβ導入後、ペグイントロン・リバビリン併用療法への移行
  • ブースター療法(ペグイントロン・リバビリン併用療法24週前後にインターフェロンβを2週間挟む)
  • リバウンド療法(急性増悪時にインターフェロン療法の導入)
  • 無効例・肝硬変・肝癌治療例に対する少量インターフェロンの長期投与

以上のような治療を行い、1群高ウイルス量の難治群の患者さんに60%以上の完治率を上げています。

また、対症療法には肝炎の鎮静化、進行を遅くするのが目的で強力ネオミノファーゲンCの注射やウルソの内服が主体です。C型慢性肝炎、肝硬変の患者さんは、最低限このような対症療法を続ける必要性があります。
さらに、肝炎の進行度や肝臓癌の発生を調べるために月に1回の血液検査、3ヵ月に1回の腹部超音波検査を受ける必要性があります。

2009/2/21 肝臓友の会 勉強会 講演要約
副院長 石井邦英


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