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肝臓友の会

18「肝細胞癌の心得」…肝臓癌の治療などの説明

原発性肝癌には、肝細胞癌、胆管細胞癌など、いくつかの種類がありますが、原発性肝癌の90%以上は肝細胞癌です。また、肝細胞癌が正常な肝臓に発生するのは非常に希なことで、その90%はB型あるいはC型肝炎ウイルスの持続感染と関連しています。第16回全国原発性肝癌追跡調査報告では、15.5%がHBs抗原陽性、71.8%がHCV抗体陽性でした。従って、肝細胞癌を予防するには、B型およびC型肝炎感染の予防が重要で、現在予防により若年齢になるに伴い感染者の数は減少の傾向にあります。
では、すでに感染している人から肝細胞癌の発生を予防するにはどうするかというと、肝炎を沈静化し肝障害の進行を抑える必要があります。このために、インターフェロン、抗ウイルス剤、強力ミノファーゲンC、ウルソなどが使用されています。

肝細胞癌の治療には、肝切除術、ラジオ波やマイクロ波による焼灼術、エタノール注入術、肝動脈塞栓術、肝動注化学療法、全身化学療法、放射線療法、肝移植などがありますが、癌の進展度(大きさ、数、脈管侵襲、肝外転移)や悪性度とともに、その人の持つ肝予備能が治療をするうえで重要な要素となります。当然、肝細胞癌が進行した状態や肝予備能が低下した状態の生命予後は悪くなります。しかし、肝予備能が良ければ、進行した肝癌でも十分に治療できることがあり、早期の肝癌でも肝予備能が悪ければ治療困難となります。

したがって、肝障害の進展を抑制し、肝細胞癌を早期に発見することは重要なことになります。GOT、GPTが上がらないように治療し、頻回にエコーなどの検査をするのはそのためです。肝細胞癌治療後の再発予防も同様です。肝細胞癌が根治しても、肝細胞癌発生の母地は残っているため、常に厳重な経過観察が必要となります。

ただ、肝移植は特殊で、肝細胞癌の発生母地である肝臓自体を取り替えてしますため、うまくいけば非常に再発が少ない治療といえます。しかし、肝臓を人からもらわなければならないという問題と、再発した場合、免疫抑制剤を使用しているため非常に進展が早いという問題があります。そのため、肝移植を行うにあたり腫瘍側の因子として再発が少ない状態の癌と規定されます。まだ、定まった基準はありませんが、たとえば、1個の結節の大きさが3cm以下で腫瘍数が3個以下などの基準があります。

肝細胞癌の心得という題名に即した内容ではなかったかと思いますが、お許し下さい。

2005/10/1 肝臓友の会 勉強会 講演要約
消化器科長 梶原雅彦


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