ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会14「最近話題の非アルコール性脂肪性肝炎」…NASHについて

肝臓友の会

14「最近話題の非アルコール性脂肪性肝炎」…NASHについて

「脂肪肝」とは、肝臓に中性脂肪が貯まり、肝臓が白く大きくなる病態をいいます。
ある施設のデータでは、日本成人の約28%が脂肪肝であったと報告されています。健康診断の血液検査で、肝機能の異常が指摘される1番の原因が脂肪肝であります。以前は、アルコールが原因の脂肪肝以外は肝硬変には進まないとされていましたが、最近、非飲酒者の脂肪肝の中には、将来、肝硬変や肝臓ガンになるものが20~30%あることがわかってきました。

医学的には、非アルコール性脂肪肝炎と定義し、特に、高度な肥満がある人、糖尿病、高脂血症を合併している人は、非アルコール性脂肪肝炎か、否か注意が必要です。すなわち、非アルコール性脂肪肝炎は、肝硬変や肝臓ガン、肝不全に進行する病気であり、内科的な治療が必要であります。

脂肪肝の治療と言うと、すぐに、ダイエットという人がいますが、厳密には間違いです。脂肪肝の治療は、原因により異なります。肥満による脂肪肝の場合には、ダイエットによる減量が治療となります。飲酒が原因の場合はもちろん禁酒が絶対に必要で、アルコール性脂肪肝の場合には1ヵ月の断酒できれいな肝臓に戻ります。

ホルモン製剤やアレルギーなどの薬が原因の脂肪肝の場合には、薬の変更、中止が必要です。さらに、高脂血症、糖尿病、甲状腺疾患などが原因の脂肪肝の場合には、その疾患の治療とコントロールが必要です。また、栄養不良や偏食がひどい場合にも脂肪肝が生じてきます。そのほか、胃・腸の手術後にも生じることがあります。

このように、脂肪肝の原因はさまざまであり、脂肪肝の治療はその原因の治療であります。このほかに、急性の経過で、生命にかかわる脂肪肝があります。妊娠末期に妊娠中毒症の妊婦さんに合併しやすい急性妊娠性脂肪肝、ある種の感冒薬を内服することにより乳幼児に稀に発生するライ症候群(急性肝不全)であります。

最初は、単なる肥満による脂肪肝であっても、そのうちにひどくなると高脂血症、糖尿病、高血圧症などの成人病が出現してきます。肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧症がすべてそろうと、死の四重奏といい、心筋梗塞、脳血管病変(脳梗塞、脳出血)などにより、突然死する危険性が高くなります。脂肪肝も成人病の一つとして注意をすることが必要で、治療した方がいいのか、治療の適応があるのか、専門家の診察を受けることをおすすめ致します。

内科長 石井 邦英


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