12「肝臓病の人の日常生活の基本」…肝臓病の方の食事や生活について
一般的に肝臓病で入院が必要な状況は、急性肝炎、慢性肝炎の急性増悪、慢性肝炎のインターフェロン治療の初期、肝硬変の増悪、食道静脈瘤の治療、肝癌の検索・治療などの場合があげられます。では、それ以外の時の日常生活をどのようにすればよいのでしょうか。
肝臓病の人にとって安静は大切なことです。それは、横たわることにより門脈血流量が増加し肝臓に血液が集まるからです。特に食後は、吸収されたものが門脈を介し肝臓に到達するため、さらに門脈血流量が増加しますので安静が必要です。
ただし、食後の安静にて食道静脈瘤などの門脈側副血行路の血流も増加し出血のリスクが増すため、食道静脈瘤のある患者さんは、むしろ食後に横たわらない方が良い場合もあります。また、安静と言っても、ごろごろ寝ているだけでは身体のリズムが崩れ、よけいに抵抗力が低下しますので、規則正しい生活の中で安静を取り入れる工夫が必要です。
GOT、GPTが100前後の慢性肝炎の人は、通常の日常生活や仕事が可能で、無理なく会話できる程度の散歩など、適度な運動はむしろ必要です。ただし、GOT、GPTが200を超えるようなときは仕事も運動も制限が必要です。できれば仕事中も疲れたら休憩できる環境があった方が良いでしょう。
入浴は思ったよりエネルギーを消費します。30分お湯につかると約1000m走るのと同じくらいエネルギーを消費すると言われていますので、ややぬるめのお湯で長湯しないようにします。温泉も同様で、長湯せずに1日1回程度にしたほうが良いでしょう。
食事療法の基本は蛋白質です。からだを構成している細胞は肝臓も含め、蛋白質からできているからです。ただし、糖質も脂質も必要なものですので、バランスの良い食事をすることが大切です。ただし、肝性脳症を起こす人に蛋白の制限が必要であったり、ヘモクロマトーシスや脂肪肝の人に鉄や脂質の制限が必要であったりします。最近、早朝の血糖低下を押さえることにより、肝機能が改善することがわかり、肝硬変の人に積極的に夜食を摂取して頂いています。
たばこやアルコールは肝臓にとって全く良いことはありませんので、禁酒・禁煙が必要です。
上記のことは、すべての人に当てはまることではありません。肝臓病は、原因および肝障害の程度でそれぞれ治療が異なりますので、主治医や栄養士と相談の上、自分に合った日常生活をみつけることが必要です。
2004/5/8 肝臓友の会 勉強会 講演要約
消化器科長 梶原雅彦