ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会30「生活習慣病と肝障害、肝臓癌-糖尿病との関連を中心に-」… 一見無関係だと思われる糖尿病との関連についてのお話です

肝臓友の会

30「生活習慣病と肝障害、肝臓癌-糖尿病との関連を中心に-」… 一見無関係だと思われる糖尿病との関連についてのお話です

近年、本邦では成人の4名に1人が肝臓病と言われています。 最も多いのが脂肪肝で1500万人以上、次がアルコール性肝障害で500万人以上、3番目がC型肝炎で約240万人、4番目がB型肝炎で約130万人です。過食、運動不足による肥満が脂肪肝の最も大きな原因であります。脂肪肝はメタボリック症候群の肝臓での表現形であり、肥満・糖尿病・高脂血症・高血圧症が揃えば、死の四重奏と言われています。これに喫煙と多飲(飲酒)が加われば自分から自殺しようとしているものです。

肥満者は肥満の無い人に比べて、肝臓癌のリスクが男性では4.5倍、女性では1.6倍の高く、その他、膵臓癌、胃癌、大腸癌、食道癌、前立腺癌、子宮癌、乳癌など、肺癌を除くほとんどの癌で、癌になるリスクが高くなってきます。 また、日本人は少しの肥満でも糖尿病になる危険性が高くなり、現在、日本には糖尿病の患者さんが、予備軍まで含めると2210万人に達しており、急速に増えていることが示されました(図1)。糖尿病が増加している原因は、運動不足と脂肪摂取量の増加に基因しており、男性では1日9200歩以上、女性では8300歩以上の歩行が推奨されています(図2)。糖尿病の患者さんは、悪性腫瘍(癌)、心筋梗塞、脳梗塞などを合併・発病する頻度が高く、平均余命も男性で9歳、女性で13歳短いことが示されています。 日本人糖尿病の死因の1番は悪性腫瘍であり39.1%に達しており、次いで、虚血性心疾患の10.2%、脳血管障害9.8%の順になっています。また、肝臓癌が12.2%、肝硬変の死因が5.3%であり、併せると肝臓病が死因となるものが約18%に観察されており、糖尿病と肝臓病の親密な関係が示されています。

このように糖尿病に罹患しないように正しい生活習慣を送ること、糖尿病の人ではきちんとコントロールすることが重要です。糖尿病の治療の3本柱は、第1が食事療法、第2が運動療法、第3が薬物療法であり、俗信に惑わされないようにしてください。 肥満による脂肪肝で糖尿病、高脂血症、高血圧症などのメタボリック症候群を有する人では、脂肪性肝炎(NASH)が生じ、肝硬変、肝臓癌へ進行する危険性が高くなります。 一方、C型肝炎の患者さんにおいて、肥満、糖尿病を合併している人は、肝臓癌を発病する危険性が最も高く、さらに、インターフェロン療法の効果が悪いことが明らかにされています。 肝硬変患者さんにおいては、約70%に耐糖能異常(糖尿病および予備軍)が存在しており、耐糖能異常者では発癌の危険性が高く、食事・運動療法を含めた耐糖能改善、標準体重への減量が重要になります。

最後に、元気に長生きするための米国の医学者が上げた、7つの生活習慣を参考にしてください。

  1. ・適切な睡眠時間を守る
  2. ・喫煙をしない
  3. ・適正体重を維持する
  4. ・過度の飲酒をしない
  5. ・定期的な運動をする
  6. ・朝食を毎日食べる
  7. ・間食をしない

 

2009/10/3 肝臓友の会 勉強会 講演要約
副院長 石井邦英


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