ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会24「肝硬変と胃や腸の話~内視鏡からみた肝臓病~」… 肝臓病患者さんに対する内視鏡についてのお話です

肝臓友の会

24「肝硬変と胃や腸の話~内視鏡からみた肝臓病~」… 肝臓病患者さんに対する内視鏡についてのお話です

肝硬変になってくると門脈圧亢進症を呈し、食道や胃に静脈瘤を形成してくる場合があります。消化管の血流は門脈を経て肝臓へ集まります。通常の臓器への血液は動脈で運ばれて静脈へ返りますが、胃、腸、脾臓、膵臓からの血液は門脈を経由して肝臓に流入します。消化管で吸収された栄養分や毒物、病原性微生物なども肝臓へ集まりここで代謝されたり解毒されたりします。

門脈圧亢進症とは?

正常な状態では、通常100~150mmH2O程度ですが、門脈圧が常に200mmH2O以上(水銀柱への単純換算では14.7mmHg以上)に上昇した場合を門脈圧亢進症といいます。
門脈圧亢進症をきたす基礎疾患は肝硬変が約80%を占め、その他にウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎などがあります。門脈圧亢進症の主症状は、食道・胃静脈瘤、腹水、肝性脳症、胃病変(門脈圧亢進性胃症、腸症)などがあげられます。

食道・静脈瘤とは?

門脈から肝臓を通って心臓に戻るはずの血液が、肝臓が硬いため十分肝臓を通って心臓に戻ることができず、門脈からバイパス(迂回路)として食道・胃を経由して戻るようになります。この時に食道や胃に出現する太い血管のことを静脈瘤と言います。静脈瘤は食道や胃にできることが多いですが、稀に大腸(結腸や肛門付近)、十二指腸にできることもあります。
食道・胃静脈瘤の症状は基本的には無症状です。この太い血管がさらに拡張して赤みを帯びてくると、破裂して、患者さんは多量の血液を吐くことになります。静脈瘤破裂による突然の出血が唯一の症状と言われています。一度破綻出血すれば、致命的要因となりうるので、胃カメラで静脈瘤の程度を観察する必要があります。

食道・胃静脈瘤の治療法は?

内視鏡治療が第一選択です。内視鏡(胃カメラ)による治療は次の二つが主流です。

  • 内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL):特殊なゴムで静脈瘤を結紮する方法
  • 内視鏡的硬化療法(EIS):静脈瘤内に硬化剤(いわゆるセメント)を注入する方法

二つの手技を併用して治療することが多いです。
一般に、静脈瘤が破裂し出血し、緊急で内視鏡治療を行った場合の予後は、予防的に治療した場合の予後より不良であります。

門脈圧亢進症性胃症・腸症

門脈圧が亢進することにより胃粘膜内の血管が拡張したり、うっ血を生じたりすることにより発生してきます。頻度は少ないですが、肝機能障害の強い人などが、出血を呈することがあります。

以上のような病気を発症することがありますので、主治医の先生と相談されながら、各個人により検査を受ける頻度は変わりますが、定期的に上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けてください。

2008/2/23 肝臓友の会 勉強会 講演要約
内視鏡室長 實藤俊昭


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