ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会20「肝臓病と日常生活の注意」…肝臓病の種類ごとの生活の注意点などを説明

肝臓友の会

20「肝臓病と日常生活の注意」…肝臓病の種類ごとの生活の注意点などを説明

肝臓病には、たくさんの種類があります。主なものは急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、アルコール性肝障害、肝硬変、肝臓癌であります。急性肝炎をおこす肝炎ウイルスには、A型〜E型までの5種類があります。また、風邪様症状をおこすウイルスのなかで、EBウイルスやサイトメガロウイルスが伝染性単核球症を生じ急性肝炎をおこします。肝炎に伴う肝機能異常が6ヵ月以上続くものを慢性肝炎といいます。慢性肝炎の原因は通常、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスのみです。A型肝炎ウイルスやE型肝炎ウイルスの場合には、急性肝炎で完治して慢性になることはありません。稀に、高齢者や妊婦さんが感染すると劇症肝炎になり命に関わることがあります。ここでは、慢性肝炎や肝硬変症における日常生活の注意について述べます。
肝臓病の日常生活について以前の常識は、今では非常識となっており、正しい日常生活を過ごして下さい。誤った神話の代表ですけど、「慢性の肝臓病の人は栄養あるもの(高たんぱく高エネルギー食)を食べ、安静が重要であり、食後1〜2時間は横になり、運動は控える。」と言うものです。C型慢性肝炎では、肥満の人が肝硬変や肝臓癌に早く進行することが明らかになりました。従って、適度の運動をして、標準体重(BMI18〜24)を維持することが重要です。安静にしているとタンパク質からできている筋肉が萎縮して脂肪に変わっていきます。筋肉は肝臓の働きを補助する作用(アンモニアの代謝)があります。適度な運動の量は、肝臓病の程度により異なりますが、肝硬変の中程度の人でも30分程度の歩行運動は問題ありません。安静が必要な時は、肝機能がGOT、GPTが200以上に上昇している時や肝不全症状(黄疸、腹水、肝性脳症)が観られる場合です。GOT、GPTが100以下であれば、日常生活や適度の運動は問題ありません。

食事においては、高たんぱく食を意識する必要はありません。高たんぱく食は、どうしても高脂肪食となりがちであり、結果として脂肪肝を生じ肝臓に負担となります。さらに、肝硬変の人ではアンモニアが高くなり、肝性脳症を誘発しやすくなります。また、炭水化物や食物繊維の摂取が少なくなります。したがって、慢性肝疾患においては、穀類・麺類、野菜・果物、肉・乳製品、脂肪の順にバランス良く食べることが重要です。肝硬変で腹水がある場合には塩分の制限が必要ですし、肝性脳症がある場合は、たんぱく制限も必要です。腸管でアンモニアが産生されるために便通のコントロール、便秘の予防が重要となります。

また、腹水や肝性脳症を繰り返す進行した肝硬変の場合には、肝臓でのグリコーゲンの貯蔵がないために早朝の空腹時に筋肉が分解してタンパク質がエネルギーとして使用され、筋肉が萎縮して肝臓の負担が増えることが判ってきました。このようになることを防ぐために、夜10時頃に、200Kcal程度の夜食を取ることを勧めています。その他にも、シジミ貝やウコンについて肝臓病に良いからと言って、多量に摂取するのは、肝臓に悪影響を及ぼしますので、善くありません。次回は、その肝障害の原因である鉄について述べたいと思います。

2006/5/27 肝臓友の会 勉強会 講演要約
内科長 石井邦英


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