ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会16「肝硬変の人の日常生活上の注意点」…便通や尿、その他について

肝臓友の会

16「肝硬変の人の日常生活上の注意点」…便通や尿、その他について

肝硬変になってもウイルス性(B型、C型)の場合には種々の抗ウイルス剤によって、またアルコール性の場合でも完全断酒によって正常の肝臓に近づくような時代になってきております。しかし、まだまだ多くの肝硬変ではその原因となるものに対する治療を行っても改善しないことの方が多い状態です。

肝硬変では原因が何であれ、加齢とともに肝細胞癌を合併してくる頻度が上昇してきます。このような場合この肝細胞癌への対処法は定期的にエコーなどの検査を行い早期発見、早期治療が最善です。肝細胞癌以外の合併症に対するケアが肝硬変患者さんの日常生活上の注意として挙げられます。

第一には便通のコントロールです。毎日十分な量で、しかも軟便がいいのです。大便が大腸内に溜まっているとアンモニアを発生させる細菌が増えたり、増えた細菌やエンドトキシンなどの細菌の一部が腸管から吸収されて全身をめぐり、敗血症や全身の感染症の原因となります。発熱の原因にもなります。

大便にはアンモニアが出来る原料の蛋白成分も未消化で残っていることもありますので、便が出にくいとこれらからアンモニアが発生してきます。大便の色にも注意が必要です。黒っぽい便は潰瘍や門脈圧亢進症性胃症や静脈瘤からの出血などが起こっている可能性があります。出血すると今度は血液も蛋白ですので、アンモニアの発生が増して、脳症を来してきますので、両方(出血と脳症)の心配があります。従って、便通には神経質になるくらいがいいと思います。

次に足の腫れや体重の増加に気を付けることが大事です。浮腫や腹水の出現を意味しています。塩分の摂取を少なくするとか水分を取りすぎないように安静を守ることなどが必要です。

肝硬変の患者さんは感染症になりやすいので、風邪をひいた時には次に肺炎への移行が心配です。一週間以上風邪症状が続く場合には、詳しく調べてもらうことが必要です。また、生の魚介類では、ビブリオや病原性大腸菌の感染による下痢、嘔吐などの胃腸炎に注意が必要です。

膀胱炎などの尿路感染症もひどくならないように、排尿を我慢しないように、夜寝てからトイレに行くのが嫌だからといって夜の水分摂取をひかえたり、トイレに行くのを我慢することのないようにしましょう。食事はこれら生のもの以外に刺激物、塩分をなるべく少なくする必要があります。食道、胃、腸の粘膜が血液のうっ滞で弱くなっているためです。

さらに肝硬変の患者さんでは骨が弱くなります。ビタミンDの吸収が悪くなるためです。小魚類、牛乳などを摂取すること、日光に当たることもいいと思います。特に原発性胆汁性肝硬変では特に骨が弱りますので、注意が必要です。

2005/2/19 肝臓友の会 勉強会 講演要約
院長 安倍弘彦


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