ホーム病院案内当院の取り組み肝臓友の会08「肝硬変合併症の管理(日常の注意)」…胃・食道静脈瘤、肝性脳症、低血糖について

肝臓友の会

08「肝硬変合併症の管理(日常の注意)」…胃・食道静脈瘤、肝性脳症、低血糖について

肝硬変の合併症としては、まず、食道や胃の静脈瘤があり、吐血の最大の原因となります。定期的(約半年に1回)に胃カメラの検査を受け、静脈瘤がひどくなっていないか、破裂しやすいかどうかをチェックします。肝臓に流れ込む血管(門脈)の圧が高くならないようにする、亜硝酸製剤のテープなどを貼っておくこともいいでしょう。さらに、門脈の圧が高くなるときに胃の粘膜が充血して出血し易くなるので、一般の胃炎と同じような注意、塩分を控え目に、刺激物、コーヒーなどの制限も必要です。

合併症の2番目には、肝性脳症(高アンモニア血症)があります。この大部分は門脈の圧が高くなって、肝臓を通過しない血液の流れ(副血行路)が出来てくるために起こります。主に、大腸の悪玉の腸内細菌によりアンモニアが産生され、正常であれば肝臓でアンモニアは解毒されます。しかし、副血行路が出来ますと、肝臓で解毒されず、全身をめぐって肝性脳症(高アンモニア血症)となって意識レベルが低下します。

アンモニアの出来る材料は、肉、魚、血液などの蛋白質で、大腸の悪玉細菌が、このアンモニアを作る生産者です。便秘になると材料の蛋白質が大腸に停滞し、また、悪玉細菌が増加してきて、沢山のアンモニアを作りだします。そのため、肝硬変症では、善玉の細菌である乳酸菌製剤をとって、悪玉の腸内細菌を増やさないようにしたり、野菜を多くとって、便秘にならないようにということも必要です。悪玉の腸内細菌を増やさないようにするには、単に肝性脳症(高アンモニア血症)の予防ということに限らないのです。

悪玉の細菌や、そのカケラは血液の中に入ってくると、敗血症やエンドトキシン血症などを呈して、種々の合併症を引き起こしてきます。このため、肝臓の機能の悪化や、腎臓の機能の悪化、肺の合併症など、全身の合併症を呈してくる原因にもなります。このような意味からも、便秘をせず、大腸をクリーンにしておくことが必要です。

肝硬変症では、しばしば、朝方に低血糖を呈してくることがあります。肝臓は正常の人では、食後、余分なエネルギーは肝細胞内にグリコーゲンとして貯えられます。朝方にはこのグリコーゲンから糖が放出されて利用されています。しかし、肝硬変の人では、肝細胞が少なくなっているため、グリコーゲンの貯えが少なくなっていて、糖が出来ず、飢餓状態になっています。そのため、脂肪や体の中の蛋白が分解されてエネルギーとして利用され、体全体にとって悪い影響を及ぼしています。

このような状況を改善するために、夜食が推奨されています。パンなどの炭水化物中心のものを夜食としてとることも大事です。種々の代謝が改善されてきます。運動に関しては、これらの合併症がある時には安静が大事ですが、合併症が落ち着いている際には、筋肉の衰えがないように工夫も必要です。

2003/2/22 肝臓友の会 勉強会 講演要約
院長 安倍弘彦


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