外科系

外科

消化器外科

消化器外科とは一般に、管を扱う消化管外科(上部消化管として食道・胃・十二指腸、下部消化管は腸・直腸)と肝臓・胆嚢・膵臓を扱う肝胆膵外科に分かれますが、当院では消化管外科および肝胆膵外科双方に対応しています。

消化管外科では腹腔内にある臓器の癌や良性の疾患を取り扱います。悪性疾患は、胃癌、腸癌、直腸癌であり、癌切除のための手術を行なっています。通常の開腹手術に加え、腹腔鏡手術にも取り組んでおり、結腸癌や直腸癌では積極的に鏡視下手術を行なっています。進行し癌が大きくなると腹腔鏡での手術が難しくなりますので、小さい段階で見つけるのが侵襲の少ない手術につながっていきます。

悪性疾患に関しては、術前術後の栄養管理、抗癌剤治療(化学療法・分子標的治療などの薬物療法)、癌による痛みに対する疼痛コントロールなどの緩和治療にも取り組んでいます。『がんの包括的治療を目指して診療を行なっています。

良性疾患としては、鼠径ヘルニア、腹壁ヘルニア、食道裂孔ヘルニア、虫垂炎、潰瘍穿孔などが挙げられますいずれも腹腔鏡による手術が可能です。

安心・安全・信頼のおける医療の提供をモットーにスタッフ一同、お待ちしております。

肝臓・胆嚢・膵臓外科

肝胆膵とは肝臓、胆道、膵臓のことで、疾患は少ないですが脾臓も含みます。大まかな役割として肝臓で作られた胆汁が胆道を流れ途中にある胆嚢に貯留されて、下流にある膵臓(膵液)と合流し十二指腸へ送られます。ここで食物の通る消化管と交わり消化や代謝に関わっています。

肝胆膵外科で扱う主な疾患
肝臓:肝細胞癌,胆管細胞癌、転移性肝腫瘍、巨大肝嚢胞、肝内結石など
胆道:肝外胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌、胆石症、胆管結石症など
膵臓:膵臓癌、膵管内腫瘍など
脾臓:肝硬変に伴う脾腫など

肝細胞癌、胆管細胞癌は患者さんの状態が許せば手術による切除がもっとも効果的ですが、腫瘍の状況により化学療法(抗癌剤)や肝細胞癌であればラジオ波焼灼術なども選択されます。消化器内科と連携して肝動脈化学塞栓療法や肝動脈動注化学療法などの治療も行われます。転移性肝腫瘍は大腸癌など他の臓器の癌が原因ですが、腫瘍の数や部位、大きさなどから手術あるいは焼灼療法と化学療法を交えて治療を行います。
肝外胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌膵臓癌も手術療法を柱として患者さんの状態や病状を考慮して化学療法を交えた治療を行います。

肝胆膵領域は動脈、門脈、静脈の複雑な脈管系と胆道系が多くのバリエーションで絡み合っています。また癌の部位により肝臓の切除、胆管・胆嚢の切除、膵臓と十二指腸の切除など手術法も多岐にわたります。手術前に3D-CTやMRI、超音波検査など最新の画像診断を行い、より安全で確実な治療を心がけ成績の向上を図っています。また月に1回、消化器内科、放射線科、外科を中心に病理や検査のスタッフを交えて手術後の症例検討会を行っております。

腹腔鏡を使用した手術も積極的に取り入れております。胆石症、脾腫、巨大肝嚢胞などの良性疾患はもちろんのこと、肝臓癌に対して2010年4月より保険適応となった腹腔鏡下肝切除術も開始しております。

乳腺外科

現在わが国において乳癌は女性の癌の発生率第1位となり、12人に1人以上が乳癌にかかっています。これは30年前の約3倍で、年間では1万人以上の女性が乳癌で死亡し、今後さらに増加すると予想されています。しかし、早期の乳癌であれば根治的治療も可能となってきました。

乳癌は体表の病気のためマンモグラフィーや超音波検査により比較的容易に診断することが可能で、40歳以上であれば症状が無くとも定期的な検診をお勧めします。

当院では、日本乳癌学会・日本乳癌検診学会で定めた”乳がん検診の精密検査実施機関基準”を満たし、女性の検査技師も従事していますので、お気軽に乳腺外来へお立ち寄りください。

治療もこの10年間で大きく変わりました。従来の大きく乳房を切除する乳房切除術から部分的に切除する乳房温存手術へ、腋窩のリンパ節郭清(全部取る手術)からセンチネルリンパ節生検(一部取る手術)へと術式変化しています。小さい腫瘤なら侵襲の少ない手術を行なうことができます。薬物療法も日々新薬が登場し、内分泌・化学療法分子標的治療とも治療選択が広くなっています。手術以外は基本的に外来通院での治療が可能です。

医師、薬剤師、看護師、技師がチームとなり乳腺治療に取り組んでいますので、ぜひ、乳腺外来をご活用ください。

肛門外科

お尻の病気である肛門病の約90%が痔です。痔とは肛門病の総称で、痔核(いぼじ)、裂肛(きれじ)、痔瘻(じろう)と大別できます。約50%が内痔核、外痔核、脱肛などの「いぼじ」、約25%が肛門の周囲に膿が貯まる「じろう」で約15%が硬い便で切れる「きれじ」です。
残り約10%に癌(ガン)などの腫瘍性の病気、直腸が出てくる直腸脱、お尻の洗いすぎが原因の肛門周囲皮膚炎、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患による随伴病変などがあります

痔核(いぼじ)
直腸下部から肛門にかけての静脈のうっ血による循環障害と言われています。内痔核と外痔核に分かれますが、大きいものでは一緒になった内外痔核もあります。外痔核は外側(肛門側)の痔で出血と脱出も起きますが、血栓(血の塊)を形成する場合があり強い痛みを伴います。痔の坐剤でも治る場合もありますが、切開して血栓を除去することにより早期の症状の改善が見込めます。内痔核は内側(直腸側)の痔なので通常痛みは伴わず、出血と脱出が主な症状です。放置してひどくなり嵌頓(戻らなくなる事)すると強い痛みを伴います。痔核の進行度は脱出の程度で分けますが、軽いものは坐剤の使用と排便習慣などでほぼ治ります。排便時に脱出して戻す必要がある場合は基本的に外科治療が必要となります。注射で行う硬化療法(ジオン注射・ALTA療法)はほとんど痛みを伴わず再発も少なく有効な治療法です。外痔核や嵌頓痔核には適応はありません。

裂肛(きれじ)
硬い便をした時に肛門の出口が切れて起こります。強い痛みと少量の出血を認めます。繰り返して慢性化すると潰瘍形成や肛門狭窄(狭くなること)を起こす場合もあります。治療は坐剤の使用と排便習慣が基本です。

痔瘻(じろう)
直腸と肛門の境目から細菌が入り感染を起こすことにより肛門周囲に膿瘍(膿の溜まり)が出来ます。この膿が大きくなりお尻の周囲から排出されると瘻孔(膿の出る穴)を作ります。瘻孔が浅く単純な物は切開で治りますが、深く複雑なものは瘻孔をくり抜く手術更に複雑なものはゴム糸を通して治す(シートン法)治療が必要となります。

まずは肛門からの出血や痛み、できものを感じたら受診して診察を受けてください。痔などの良性疾患であれば治療を進めていきます。しかし直腸癌・肛門癌などの悪性疾患が稀に隠れている場合もありますので早めの受診をお願いします。

呼吸器外科

呼吸器外科で扱う主な疾患には1)肺がん、2)転移性肺腫瘍、3)縦隔腫瘍、4)気胸、5)膿胸、6)胸部外傷などがあります。当院では呼吸器外科専門外来を火曜日午前中に設けており、午後に専門医による手術を行っています。

1)肺がん:肺がんの組織型は多種多様で、代表的な組織型として腺がん(約50%)、扁平上皮がん(約30%)、大細胞がん(約5%)、小細胞がん(約15%)などがあります。特に最近では喫煙しない人にも発生する腺がんが増加傾向にあります。CTの解像度の向上に伴い、小型肺がんの発見も増加しています。治療には手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、緩和ケア、経過観察のみなど様々なものがあり、どの治療を組み合わせるべきかを各症例で詳細に検討することが大切です。手術方法に関しても標準手術、拡大手術、縮小手術の適応をしっかりと見極め、患者さんにとって最もよいと考えられる方法を慎重に選択する必要があります。
2)転移性肺腫瘍:肺は全身のフィルターになる臓器ですから、身体のどこかに悪性腫瘍があった場合に、血行性またはリンパ行性に肺へ運ばれてそこで腫瘍を形成することがあります。これを転移性肺腫瘍と呼び、原発性肺がんと区別して考えます。この扱いには消化器・乳腺・頭頸部・婦人科などの原発巣の知識が必要です。
3)縦隔腫瘍:胸の真ん中で深いところに位置する部位を解剖学的に縦隔(じゅうかく)と呼びます。この部位は心臓・気管・食道・神経など生命をつかさどるのに欠かせない臓器がひしめき合っている場所です。従って様々な臓器から発生する腫瘍ができやすく、大きくなると生命を脅かすことにもなりかねません。しかも骨格で守られた部位なのでその診断・治療のアプローチは容易ではありません。
4)気胸:肺が破れてしぼみ、空気が胸の中にたまる病態を気胸といいます。若年者に発生するもの、高齢者や喫煙者に発生するもの、男性に見られるもの、女性にみられるものなど、それぞれに対処方法が異なります。また気胸は再発しやすい疾患です。
5)膿胸:胸にうみがたまることを膿胸(のうきょう)といいます。原因によっては難治性や重症化するものが少なくありません。

上記に示したように、呼吸器外科で扱う疾患は多種多様で、複雑で、様々な分野が関与する場合が多いのが特徴です。当院では他分野の外科、呼吸器内科、麻酔科、病理などとの横断的連携がスムーズであり、症例ごとに最も適切だと考えられる治療法を検討し、医療を施される側も施す側も安心度・満足度が高くなるように心がけています。また、地域医療機関や大学病院との連携も強化しています。

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